アワリーマッチングとは?GHGプロトコル改定案から見る再エネ調達の新基軸
温室効果ガス(GHG)排出量算定の国際基準であるGHGプロトルの改定で注目を集める「アワリーマッチング」。その概要やメリット・課題を整理し、今後の再エネ調達のあり方について解説します。
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アワリーマッチングとは
アワリーマッチングとは、端的に言うと、再生可能エネルギーの環境価値(証書)と電力需要を1時間単位で合致させる考え方です。GHGプロトコルにおける、購入電力などの間接排出量に関するScope2ガイダンスにおいて、新たに導入が検討されています。再エネの電気は、電気そのものの価値のほかに、発電時に温室効果ガス(GHG)を排出しないという「環境価値」を持っています。環境価値は、取引しやすいように「証書」という形で売買されます。
日本の制度では現在、電気の使用量と証書の調達量を1年単位で合致させれば、「電気の使用によるGHG排出量はゼロ」とみなすことができます。これを1年単位ではなく、1時間単位で合致させるのが、アワリーマッチングという考え方です。アワリーマッチングは、企業の脱炭素の取り組みにおける新基準になるのではないかと注目度が高まっています。
GHGプロトコルとは
GHGプロトコルは、世界資源研究所(WRI)と世界持続的開発ビジネス協議会(WBCSD)が中心となって1990年代後半に設立した国際団体であり、GHG排出量の算定・報告のための基準やガイダンス、計算ツールなどを定めています。これらの基準やガイダンスは、世界中の企業に広く採用されるグローバルスタンダードとなっており、GHGプロトコルによって定められた基準そのものを指して「GHGプロトコル」と呼ぶこともあります。GHGプロトコルの基準は、GHG排出量のScope1(直接排出)、Scope2(間接排出)、Scope3(自社の事業活動に関連する他社の排出量)のすべてをカバーしています。
なぜ今改定が議論されているのか
GHGプロトコルが企業向け報告基準の初版を発行したのは2001年でした。これまでに複数回の改定が行われていますが、初版の発行からすでに20年以上が経過しました。企業を取り巻く状況も変化していることなどから、2024年、GHGプロトコルの基準の抜本的な見直しがスタートしました。改定案は2027年を目処に最終化される見通しであり、2026年7月現在、見直し作業が大詰めを迎えています。
Scope2ガイダンス改定案の主な論点
GHGプロトコル改定のScope2ガイダンスをめぐっては、前述したアワリーマッチングのほか、供給可能性(デリバラビリティ)、標準供給サービス(SSS)の供給制限といった論点に関心が集まっています。
アワリーマッチング
アワリーマッチングは、電力需要と証書を1時間単位で合致させる考え方です。1年単位ではなく、1時間単位での合致を求めることで、より電力需要の実態に即した再エネの調達を促す意図があります。
例えば、太陽光発電による再エネ調達を検討する場合、太陽光発電が発電しない夜間や雨天などには、別の再エネ電源からの電力調達を模索する必要性が生まれるでしょう。こうした考え方は、次に紹介する供給可能性(デリバラビリティ)とも深い関わりがあります。
供給可能性(デリバラビリティ)
供給可能性(デリバラビリティ)とは、企業が調達する証書が物理的に供給可能とみなされる電源から調達されていることを要求するものです。具体的には、需要家と電源が「同一市場境界内」にあることが求められ、オフサイトPPAなどが含まれると考えられます。その一方で、再エネ発電所から証書のみを調達し、市場などから電力を調達するバーチャルPPAは、供給可能性がないとみなされる可能性があります。
標準供給サービス(SSS)の供給制限
標準供給サービス(SSS、Standard Supply Service)とは、規制によってコストが回収され、政府によって義務化または公的に保有された発電設備からの電力供給を指します。標準供給サービス(SSS)の供給制限とは、公的な支援を受けた非化石電源による証書を調達する場合、再エネの調達率に関しては市場平均までしか主張できないとする条件です。例えば、FIT制度は、広く国民が負担する再エネ賦課金によって成り立っています。そのため、FIT電源による証書を調達する場合、「再エネ100%」であることを訴求することは認められなくなる可能性があります。
24/7 CFEとは、24時間×7日(一週間)にわたって、カーボンフリー電力を調達することを意味します。つまり、GHG排出量がない電力をリアルタイムで調達することです。
「24/7 CFE」というキーワードが普及するきっかけの1つとして、国連が主導する国際イニシアチブである「24/7 Carbon Free Energy Compact」があります。これは、電力の完全な脱炭素化を目指すため、2021年に発足した国際的な枠組みで、アワリーマッチングなどの普及を促進しています。2026年7月現在、世界中から186の賛同企業・団体が参加しています。
企業が知っておくべきアワリーマッチングによるメリット
アワリーマッチングの社会的な要請が高まる中、企業が自社の再エネ調達戦略を検討するうえでは、取り組むメリットを把握しておく必要があります。
時間単位での再エネ電力使用を証明できる
アワリーマッチングに取り組み、1時間単位での電力需要と証書を合致させることで、より厳密な再エネ調達を実施していることを証明できます。1年単位ではなく、1時間単位というほぼリアルタイムでの調達になるため、再エネ電源の普及に寄与することもできるでしょう。
先駆的な脱炭素の取り組みとしてアピールできる
現在の日本の制度では、1年単位で電力需要と証書をマッチングすることで、「再エネ100%」と訴求することが認められています。アワリーマッチングは、こうした国の制度より先行して1時間単位での合致を実現するものです。アワリーマッチングに取り組むことで、企業として脱炭素化に積極的な姿勢を広くアピールできるでしょう。その結果、取引先や株主などのステークホルダーをはじめ、リクルート面でも強みとなる可能性があります。
アワリーマッチングを実現するための課題
アワリーマッチングは先駆的な取り組みである反面、取り組みにおいてはいくつかの課題もあります。
1時間単位でマッチングさせる仕組みが少ない
前述した通り、日本では現在、アワリーマッチングは義務化されていないため、1時間単位で電力需要と証書を合致させる仕組みがまだ多くありません。そのため、実際に取り組む際に選択肢が少なく、取り組みにかかるコストの負担が発生する場合もあるでしょう。
自社に適した再エネを調達する難易度が高い
現在、太陽光発電によるコーポレートPPAが広く活用されていますが、太陽光発電は晴れた日中しか発電することができません。アワリーマッチングの考え方では、24時間365日にわたって、電力需要と証書を一致させる必要があることから、夜間や雨天時の再エネ電源をどのように調達するかが課題になるでしょう。場合によっては、太陽光発電だけでなく、他の種類の再エネ電源の調達や蓄電池を併設した再エネ発電設備を検討する必要があり、再エネ調達の難易度が高まる可能性もあります。

まとめ
アワリーマッチングは、企業の電力需要の実態に伴った再エネ調達のあり方として、注目が高まっています。現在、電力需要と証書は1年単位でマッチングすれば、「再エネ100%」と表現することが可能ですが、今後は、よりハードルが高くなる可能性があります。
アワリーマッチングの考え方が導入されると、コーポレートPPAのあり方にも影響が及ぶでしょう。こうした背景を考慮すると、再エネ調達の手段を1つに絞らず、いくつかの方策を組み合わせて脱炭素化を進めることが得策だと言えるのではないでしょうか。例えば、バーチャルPPAだけでなく、フィジカルPPAの可能性を検討するなど、国際的な制度の動向を踏まえた再エネ調達戦略が求められています。
ユーラスエナジーホールディングスのコーポレートPPA事業については、以下のページをご覧ください。
〈よくあるご質問〉
Q1. アワリーマッチングとは?
A1. 再エネの環境価値(証書)と電力需要を1時間単位で合致させる考え方です。温室効果ガス(GHG)排出量算定の国際基準であるGHGプロトコルの、購入電力などの間接排出量に関するScope2ガイダンスで、新たに導入が検討されています。
Q2. アワリーマッチングに取り組むメリットは?
A2. アワリーマッチングに取り組むことで、自社の電力需要に即した再エネ調達が実現でき、再エネの普及に貢献することができます。アワリーマッチングという先駆的な取り組みを行っていることを対外的にアピールすることで、ステークホルダーに評価される可能性があります。
Q3. アワリーマッチングに取り組むデメリットは?
A3. 先進的な取り組みである反面、アワリーマッチングを実現する仕組みはまだ十分には整っていません。そのため、仕組みの構築に時間やコストがかかる可能性があります。
Q4. 24/7 CFEとは?
A4. 24時間×7日(一週間)にわたって、カーボンフリー電力をリアルタイムで調達することを意味します。
Q5. GHGプロトコルの改定とは?
A5. GHGプロトコルが企業向け報告基準の初版を発行してから20年以上が経過し、さまざまな環境の変化を受けて、改定が進められています。2027年に最終版が公表される予定であり、アワリーマッチングなどの条件がどのような取り扱いになるのか注目されています。



