需給調整市場とは?蓄電池ビジネスに欠かせない仕組みをわかりやすく解説

系統用蓄電池ビジネスの舞台である需給調整市場。そもそも需給調整市場とはどのような市場なのでしょうか。役割や背景、商品の特徴など、系統用蓄電池事業者が知っておくべき内容をゼロから解説します。

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需給調整市場とは

需給調整市場とは、電力の安定供給に不可欠な「調整力」を取引する市場です。そもそも、電気は大量に貯めることが難しく、安定的な電力供給のためには需要と供給を常に一致させなければなりません。電力需給のギャップを一致させるのが、一般送配電事業者(東京電力パワーグリッドなど)による「調整力」の運用です。

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なるほど!グリッド 出力制御について」(資源エネルギー庁)を加工して作成

調整力とは、発電所や蓄電池などの電源を、出力を調整できる状態であらかじめ確保することをいいます。専門的には「ΔkW(デルタキロワット)価値」と言い、電力の安定供給のために極めて重要な役割を担っています。近年は、太陽光発電や風力発電といった出力が変動する再生可能エネルギーの導入が進み、こうした出力変動に対応するため、調整力を取引する需給調整市場の重要性が高まっています。

卸電力市場、容量市場との違い

電力に関する市場には、他にも卸電力市場、容量市場などがあります。それぞれ取引される価値が異なり、卸電力市場では「kWh価値」、容量市場では「kW価値」が取引されます。卸電力市場は、実際に発電された電気を取引する市場で、「kWh価値」という電気そのものの価値を取引します。容量市場では、将来、必要なときに発電する能力である「kW価値」という供給力を取引します。容量市場では、将来の発電所の容量(kW)を取引することで、発電所を維持するコストを確保する目的があります。

需給調整市場が創設された背景

もともと、調整力は旧一般電気事業者が各自で調達していました。2016年4月の電気事業法改正を受けて、一般送配電事業者が行う公募によって各エリアの調整力を調達することが義務化されました。2021年4月に、エリアを超えた広域的な調整力の調達・運用を可能にし、競争の活性化や透明化を目指して、需給調整市場が創設されました。このようにして、一般送配電事業者が調整力をより広く、より効率的に調達する仕組みが整えられてきました。

需給調整市場での取引の流れ

需給調整市場での買い手は一般送配電事業者、売り手は発電事業者やアグリゲーターなどです。アグリゲーターとは、さまざまな電源を取りまとめてコントロールする事業者で、詳細は後述します。

大まかな取引の流れとして、まず、一般送配電事業者が必要な調整力を提示し、それに対して発電事業者やアグリゲーターが応札します。需給調整市場には5つの商品があり、それぞれに要件や上限価格があらかじめ設定されています。応札者は、これらの要件を満たした上で応札を行います。続いて、各社の応札の中から、価格や量、条件などにマッチングしたものが取引として成立し、調整力が確保される仕組みです。

需給調整市場で取引される商品

需給調整市場で取引される商品は、上図の通り、「一次調整力」「二次調整力①」「二次調整力②」「三次調整力①」「三次調整力②」と、これらを組み合わせた「複合商品」です。各商品には、一般送配電事業者が出力の増減を指令してから応答するまでの時間、指令の方法、応答の継続時間など、それぞれ異なる要件(リクワイヤメント)が設定されています。

●一次調整力

数秒〜数分の極めて短い需要の変動に対応するための調整力です。短時間で調整力を提供するため、自端(発電機がある場所)で周波数の変化を検知して発電出力を増減させるまでの時間が10秒以内とされています。一次調整力は、需給調整市場で最もリクワイヤメントが厳しい商品です。

●二次調整力①

数分〜十数分程度の需要変動に対応するための調整力です。一般送配電事業者の指令に応答するまでの応動時間は5分以内、継続時間は30分以上(2026年度より30分に変更)とされています。

●二次調整力②

十数分〜数時間という、比較的長時間の需要変動に対応するための調整力です。二次調整力①と同じく、応動時間は5分以内、継続時間は30分以上(2026年度より30分に変更)です。

●三次調整力①

十数分〜数時間の需要変動に対応する調整力ですが、リクワイヤメントがより緩和されており、応動時間は15分以内、継続時間は3時間(2026年度より30分に変更)です。

●三次調整力②

上記の商品とは性格が異なり、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの出力の予測誤差を埋めるための調整力です。応動時間は60分以内、継続時間は30分と、最も簡易なリクワイヤメントとなっています。

●複合商品

1つの電源が、一次調整力から三次調整力①までの複数の区分にまたがって同時に応札する仕組みです。競争を促進し、落札価格が最も安価になることを目指して設定された商品です。

【コラム】需給調整市場ガイドラインとは

需給調整市場ガイドラインは、市場で大きな支配力を持つ大規模なプレーヤーに対して、影響力を考慮した「望ましい措置」を求めるものです。ただし、これらの措置は、支配力の大きな事業者以外においても望ましいものとされています。具体的には、応札価格の設定の考え方などの規律が記載されています。経済産業省内に置かれた中立的な機関である「電力・ガス取引監視等委員会」が設けたガイドラインで、需給調整市場の創設以来、複数回にわたって改正されています。

系統用蓄電池が需給調整市場に参加するには

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系統用蓄電池とは、電力系統に直接接続して、さまざまな価値を提供する蓄電池です。充放電機能を持つため、調整力を柔軟かつ迅速に提供でき、電力の安定供給に役立つと期待されています。系統用蓄電池が需給調整市場に参加する際に重要なポイントを3つ挙げます。

ポイント①アグリゲーターの選定

系統用蓄電池が需給調整市場に参加する際に、重要な役割を担うのがアグリゲーターです。前述した通り、アグリゲーターは、さまざまな電源を取りまとめてコントロールする事業者であり、系統用蓄電池の運用も行います。系統用蓄電池のビジネスは、発電所と違って売電収益を上げる仕組みではなく、需給調整市場などの市場における運用益が主な収入源になります。そのため、運用を行うアグリゲーターの存在が極めて重要になります。なお、アグリゲーターが果たす役割については、こちらの記事も併せてご覧ください。

ポイント②系統用蓄電池のスペックとアグリゲーターとの互換性

系統用蓄電池の仕様が需給調整市場の各商品のリクワイヤメントを満たしていることも、需給調整市場に参加するのに不可欠な条件です。例えば、一次調整力に参加する場合には、自端制御や周波数の調整ができることが必須ですが、これは系統用蓄電池そのもののスペックに関わります。さらに、アグリゲーターが持つシステムと系統用蓄電池の互換性も確認したうえで、システムの改修が必要になる場合もあります。

ポイント③ルールの変更へのスピーディな対応

需給調整市場をはじめ、電力に関するルールや制度はたびたび見直されています。例えば、一次調整力と二次調整力①は2026年度以降、上限価格がこれまでの19.51円/ΔkW・30分から15円/ΔkW・30分に変更される見通しです。これは、募集量の削減に伴って調整力の調達コストを引き下げようとする措置で、単一商品・複合商品での応札に関わらず適用される見込みです。

また、2026年4月からは、需要地にある太陽光発電や蓄電池といった小規模分散型電源も需給調整市場へ参加できるようになります。これには、住宅用太陽光発電や蓄電池なども含まれ、数多くの電源を取りまとめるアグリゲーターの重要性がますます高まっていくと考えられます。こうしたルールの変更に迅速に対応できるかどうかが、系統用蓄電池ビジネスの成否を左右すると言えるでしょう。

まとめ:電力の安定供給に欠かせない需給調整市場

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需給調整市場は、電力の安定供給のために極めて重要な役割を果たしています。需給調整市場では、調整力が5つの商品に分けられ、発電事業者やアグリゲーターなどとの取引が行われています。充放電機能を持つ系統用蓄電池は、迅速で柔軟な調整力の提供ができると期待され、コントロールを行うアグリゲーターの重要性が高まっています。

ユーラスエナジーホールディングスでは、再生可能エネルギーや蓄電池を統合制御するVPP(バーチャルパワープラント)プラットフォーム「ReEra(リエラ)」を活用した、系統用蓄電池運用サービスを展開しています。自社開発のプラットフォームであるReEraは、需給調整市場をはじめとして、卸電力市場や容量市場など多様な市場取引に対応しています。また、自社の案件や実証事業で培った実績を活かし、市場の変化に合わせて進化し続けるサービスを提供しています。系統用蓄電池ビジネスへの参入をご検討の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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