風力発電ができるまで~開発の流れを解説~
風力発電所はどのようにして建設されるのでしょうか?計画から建設までの流れをわかりやすく解説します。
- 風力発電

風力発電とは?
風力発電とは、風の力を利用して風車を回転させ電気をつくる発電方法です。風力発電所の開発の工程の紹介の前に、まずは風力発電所の構成を解説します。
風力発電所の構成

風力発電では、風車を利用して発電します。現在主流となっているのは、プロペラ型の大型風車で、3枚羽根の「ブレード」と「ハブ」を組み合わせた「ローター」、増速機や発電機を格納している「ナセル」、それらを支える円柱状の「タワー」によって構成されています。
風力発電の仕組みについては、風力発電の仕組みとは?メリット・デメリットも簡単に解説をご覧ください。
風力発電所の開発は、この風車をどこにどれくらい建設するかということを考える工程となります。
風力発電の開発の流れとは?
風力発電所は、企画から実際の建設が始まるまでに約5~7年を要します。立地調査に始まり、風況調査や基本設計、地元への説明、各種協議・許認可手続き等を経て、事業認定を取得し、ようやく建設を始めることができます。
風力発電の建設が始まるまでの工程を一つ一つ解説します。
立地調査
まずは、風力発電所に適した場所を選定するため、立地調査を行います。風力発電に適している場所の条件として、年平均風速6.0m/s以上の風があること、広大な土地があること、幅5m以上の輸送路があること、送電線が近くにあることなどが挙げられます。

専用システムを使って有望地域を選定し、環境省やNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の風況マップや周辺気象官署の観測データなどの公開情報で風況などの自然条件の確認や、土地の権利関係や地権者、地目などの地理条件の調査を行います。また、周辺地域や自然環境への影響がないか文献調査や、社員の現地調査も合わせて行い、候補地を絞り込みます。
風況調査
絞り込んだ候補地で、実際の風況を調査します。風況は風力発電事業開発の最重要因子となるため、公開情報だけではなく必ず現地調査を行います。
候補地に高さ約60mの風況観測塔を設置します。風速計や風向計、気温計などのセンサーが設置されているので、平均風速や瞬間風速、風向・風速の出現率などを計測します。四季を通じて状況が異なることがあるため、最低一年以上のデータを取得し、風況特性やエネルギー取得量の評価を行います。
基本設計
周辺環境や地形を踏まえ、使用する風車の選定を行い、どのように設置すると効率的に発電できるか、環境負荷を低減できるかなど、さまざまな分野の専門家の意見も伺いながら、最適なレイアウトを検討します。
系統連系協議
風力発電所が生み出す電気をどの電力会社の送電線につなぎ、どのように電力を販売するか、電力会社と協議を行います。
事業説明会
風力発電事業は、30年以上にわたる長期事業となるため、地域の皆さまとのご理解とご協力を得られるよう、継続的に事業説明を行います。皆さまの意見を踏まえ、よりよい事業計画にしていきます。
環境影響評価
風力発電所の開発に欠かせないのが、環境影響評価(環境アセスメント)です。
環境影響評価とは、事業を実施するにあたって、騒音や低周波音、景観、動植物などの生態系など環境にどのような影響を及ぼすかについて自ら調査、予測、評価を行い、その結果を公表して国民や地方公共団体から意見を聴き、環境保全の観点から総合的かつ計画的により望ましい事業計画を作り上げていこうとする制度です。出力50,000kW以上の風力発電所は「第一種事業」、出力37,500kW~50,000kW未満の風力発電所は「第二種事業」となり、環境影響評価が義務付けられています。
環境影響評価では、配慮書、方法書、準備書、評価書、報告書の5つの環境アセスメント図書を事業者が作成します。最初の配慮書で事業の位置・規模等の検討段階を公表し、各段階で住民の皆さまのご意見の反映や、環境影響の範囲を検討しながら、実際に事業化可能なエリアの絞り込みを行っていきます。
各種手続き・認定取得
風力発電所の開発にあたっては、環境影響評価以外にも、さまざまな手続きが必要となります。土地に関する手続きでは、自然公園法や森林法、農地法、海岸法などが適用され、土地の利用にあたっては許認可を得る必要があります。また、建設工事に関する手続きでは、建築基準法や道路法、電波法、航空法などのさまざまな法令をクリアする必要があります。
また、各種手続きと並行して、経済産業省に対する事業計画認定の申請および取得手続きを行います。
実施設計
建設予定地の地盤に問題がないか、測量調査や地質調査を行います。また、建設に必要な設備設計、工事設計、施工計画のほか、風車のブレードやタワーなどの部材を港から建設予定地まで運搬する輸送計画なども立てます。
これらの準備が整って、いよいよ風力発電所の建設が始まります。
風力発電所の建設については、風力発電ができるまで~建設工事の流れを解説~をご覧ください。
まとめ
風力発電所の建設には、立地調査から環境影響評価、各種許認可の取得、設計・輸送計画まで、約5~7年の長い準備期間が必要です。これらの工程を丁寧に進めることで、地域社会や自然環境に配慮した持続可能な風力発電事業が実現します。風力発電は、再生可能エネルギーの中でも注目される分野であり、今後のエネルギー政策において重要な役割を担っています。